ゼロから鈍感力を身に付けすぎた私の着地点
2022年6月30日
カテゴリー: 自分磨きコラム
SNS時代の必須スキルとして注目されている鈍感力。
2007年の流行語大賞に選ばれたことで注目されたもので、スルースキルとも呼ばれています。
「鈍感力って何だろう?」
「鈍感が力になるってどういうこと?」
「スルーしたらダメじゃないの?」
そんな疑問について考える番組が先日放送されました。
インターネット放送局「ABEMA」の報道番組「ABEMA Prime」で特集された「鈍感力&スルースキルとは?今を生き抜くシン処世術」のコーナーです。
わたくし宮治もリモートゲストとして生出演する機会に恵まれ、鈍感力に関する経験談をお話しました。
鈍感力がないことに気付いてから20年。
鈍感力を身に付けすぎて失敗をしながらも、今は敏感と鈍感の調整がうまくできるようになってきたと自負しています。
番組を視聴してくださった方から「宮治さんの経験談をもっと知りたい」という声が届き驚いていますが、それだけ鈍感力を発揮したい状況に悩まれている方がいるのだと痛感しています。
どこまでご期待に添えられるか分かりませんが、鈍感力に関する私なりの体験を紹介しますので、少しでも何かの参考になれば嬉しいです。
鈍感力とは?
まずはじめに整理をしておきたいことは、鈍感力の定義です。
・ストレスになりそうな外部情報を自分の中で貯めこまず、上手く受け流す力 ・立ち直りが早く、物事を前向きに捉える力 ・自分が受け止める必要があることなのか否か、選択する力 |
このように鈍感力とは何か調べると、様々な定義が出てきます。
私鈍感力を「受け流す力」=「スルースキル」と理解していましたが、番組で解説されていた心理カウンセラーのみき いちたろうさんがおっしゃっていた「承る必要があるかどうかを取捨選択できること」という話に腹落ち感がありました。
まさに私が鈍感力ゼロから敏感と鈍感の調整がうまくできるようになったきっかけが取捨選択だったからです。
鈍感と敏感の間で葛藤してきた20年。
様々な定義をミックスした形になりますが、私なりの解釈として本記事では鈍感力を以下のように定義します。
見聞きした外部情報が自分にとって必要か見極め、不要だと判断したものに執着せず受け流す力 |
あなたは、鈍感力を身に付けたいでしょうか?
それとも自分には必要ないと思われますか?
私はその答えを持ち合わせていませんが、過去の経験をシェアすることはできますので、そこから何か参考にしていただけることがあるかもしれません。
もしよろしければ、読み進めてみてくださいね。
「鈍感力ゼロ」だと気づいた日
私が「鈍感力」という言葉を初めて聞いたのは20年以上前に友人のような同僚のひと言でした。
周りの視線やヒソヒソ声に過剰反応し過ぎて疲れ切っていた時に「鈍感力ゼロだよね」と言われたのがきっかけです。
誰も私のことを見ていないのに「なんか変だったかな?」と不安になったり。
ひそひそ声が聞こえてきたら「私のことかな?」「大丈夫かな」と怯えてしまったり。
今思えば完全に自意識過剰な状態でした。
「鈍感力ゼロ」と言われるまでは「どんなことでも自分事として考えないのは無責任だ」という気持ちも強かったです。
まわりの人からは「生真面目すぎる」「何でも背負い過ぎている」と言われていたこともあり、「鈍感力ゼロ」と言われた時に妙な納得感がありました。
鈍感力の身に付け方
「よし!鈍感力を身に付けよう!」
疲れ切っていた私は鈍感力を身に付ける決心をし、手始めに人間観察をやめました。
人への興味、というよりも「嫌われないための振る舞い」をするためのヒントを得るために、人間観察することが習慣になっていたからです。
習慣化したものをやめるには強制力が必要だったので、私は本の世界に救いを求めました。
人間観察をしていた時間は強制的に読書をする「強制読書」と決め、外部情報を遮断しようと考えたのです。
はじめは聞こえてくる耳からの情報に意識が向いてしまい、集中して本に向き合うことはできませんでした。
おそらく、本の世界よりも目の前に存在している人への興味が強かったことが影響していたのでしょう。
それでも「これは訓練だ」と言い聞かせて強制読書を続けたところ、半年後くらいから徐々に気になる外部情報が減り、まわりの声も視線も気にならなくなってきました。
「行動が変われば結果が変わる」
まさに、この言葉通りのことが起きました。
そしてもうひとつ、強制読書の他にも並行して取り込んだのが「事実と思い込みの答え合わせ」です。
例えば、何かヒソヒソ話が聞こえた時は、時間をおいてから「あの時、何を話していたの?」と確認してみました。
とても勇気がいることですし、誰に対しても確認できることではありません。
本当のことを言えず、実際は私のことを話していたとしても「違うよ」としか言えないこともあったとも思います。
でも私は「本当に私が勝手に気にし過ぎているだけ」なのか検証したかったのです。
「人の話を受け流す」「気にしないようにする」といった意識的コントロールをすることは難しかったので、事実を積み重ねることで安心したい気持ちがありました。
と、サラッと振り返っていますが、なかなかハードルの高い方法ですよね(笑)
私の場合は同僚が間に入ってサポートしてくれたおかげで試すことができましたが、きっと1人では無理だったと思います。
結果的に事実と思い込みの答え合わせをして分かったことは、自分のことは話題にも上がっていないことです。
勝手に作り上げた幻想に勝手に気疲れし、勝手にストレスを感じていただけでした。
「どれだけ自意識過剰だったんだ」という話です。
事実と思い込みを答え合わせ重ねること1年。
少しずつではありますが、他人の言動が気にならなくなりました。
鈍感力を身に付けて良かったメリット
こうして「強制読書」と「事実と思い込みの答え合わせ」で鈍感力を身に付けた私は、日々の生活の中で心の窮屈さを感じることが減りました。
私が鈍感力を身に付けて実感できた主なメリットは3つあります。
【実感できた鈍感力のメリット】 ・自分の気持ちを大切にできるようになった ・ネガティブな妄想が減った ・嫌なことがあっても気持ちの切り替えが早くなった |
他人に対して鈍感になった分、自分の気持ちを大切にできるようになったのが大きな変化です。
自分より相手のことを優先する傾向がありましたが、自分の気持ちも踏まえて状況判断ができるようになりました。
自分を大切にできると心が穏やかになるようで、ストレスも激減。
ネガティブなことは妄想でしかないということを自覚できたことで、ネガティブな気持ちが沸き上がってきても気持ちを切り替えられるようにもなりました。
鈍感力を身に付けて痛感したデメリット
「鈍感力ってすばらしい!」
鈍感力が身に付いたと自覚できてからメリットばかり感じていましたが、半年ほど経過した頃から違和感を覚えるようになりました。
まわりの人の気持ちが汲み取れることができず、SOSを見逃すことが増えたのです。
今までなら誰よりも真っ先に気付くような大切な人の変化に気付けなかったときは本当にショックでした。
「鈍感というより無関心なのでは?」
この時、私が身に付けた鈍感力は鈍感を通り越して無関心になっていたのだと痛感しました。
人と関わる仕事をしているのに、相手の気持ちや言葉の背景を汲み取れなくなるのはデメリットでしかありません。
何でもかんでもスルーするのは、鈍感ではなく無関心。
何を受け止め、何をスルーするのかを見極めることができなければ、鈍感力を発揮することはできないと身をもって知りました。
番組出演のきっかけとなったツイートは、この時の経験が元となっています。
「敏感力と鈍感力」
— 宮治 有希乃|組織の人間関係を整える人 (@ymiyaji7920) April 25, 2020
あらゆることに疲れてしまった20年前、朗らかな同僚から「鈍感力ゼロだね」と言われたことがある。
それ以来、自分に対するネガティブなことは鈍感というかスルーするようになったけど、やっぱり私は敏感でいたい。
人の優しさや愛情、相手の痛みや不安をしっかり感じたいから。
鈍感力より生きやすくなった思考法
「無関心になるくらいなら敏感でいたい」
自分の気持ちが決まってからは、何でもかんでも受け止めるのではなく必要なものを見極めようと心掛けました。
でも、これがなかなか難しかったです。
ついネガティブなことを妄想していまい、ストレス・気疲れの日々に逆戻り。
この時に学んだ「ポジティブ思考」は性に合わず、あきらかに逆効果。
完全に負のループに陥り、どうしたものかと途方に暮れていた時に出会えたのが「陽転思考」でした。
陽転思考とは「ネガティブな感情や事柄も受け入れて、その中から『よかったこと』を探して気持ちを切り替えていく」という考え方です。
「泣いてもいいし、落ち込んでもいいけれど、そのままの状態でずっと過ごし続けるのか」
それとも「そのネガティブの中から『よかったこと』をひとつでもみつけて気持ちを切り替えて過ごすのか」
「あなたはどちらを選びますか」という思考法です。
陽転思考をベースに思考の癖が変わってくると、「ネガティブな状態でずっといるより、気持ちを切り替えた方がいいよね」と思えることが増え、心の波が安定してくるようになりました。
陽転思考は鈍感力とは異なりますが、「必要なものを見極める」「不要なものを手放す」という点では共通点があると理解しています。
鈍感力を身に付けたい方にもオススメしたい「良かった探し」。
良い方向に思考が変われば行動が変わる。
行動が変われば結果も変わる。
「鈍感力ゼロ」と言われてから20年。
紆余曲折しながらも「心が安定している」と言われることが増えたのは、思考と行動が変わった結果です。
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宮治 有希乃
組織育成パートナー
ITベンチャーと人材ビジネス業界で11年間、組織人事・キャリア領域に取り組み、2018年に独立。現在は中小企業向けに、関係の質を高める組織育成プログラムを提供中。「関係の質」を高める「コミュニケーションスタイル診断」を活用し、研修やコンサルティングを通じて組織パフォーマンスの向上と健全な職場環境づくりを支援している。