【連載企画#65】人事の仕事
2022年7月19日
カテゴリー: 組織育成コラム
この記事は、キャリアコンサルタントコミュニティ「キャリコンサロン」内で発足された「編集部」の【note週イチ投稿企画】で執筆した記事をベースに掲載しています。 |
人事とは?
私の人事経験はローカルITベンチャー企業勤務時代の約5年間です。
Wikipediaによると人事とは「企業その他の団体・組織における職員の処遇などの決定に関する業務」と定義されてます。
しかしながら「で、具体的には?」と突っ込みたくなる仕事ではないでしょうか?
そこで本記事では、私が経験してきた人事の仕事や人事として心掛けてたことを振り返りながらご紹介します。
人事経験者向けというよりは「人事に興味はあるけど、よくわからない人」に向けた内容です。
※あくまでも一企業の一担当者の体験談となります。「人事の仕事とは何か」を定義するものではありませんので、ご留意ください。
人事経歴サマリ
私はローカルITベンチャー企業に54人目の社員として「100人企業に成長させる」ことをミッションに入社しました。
36歳、人事業務未経験。
入社前は総合人材ビジネス会社のIT人材営業兼コーディネーター。
BPOプロジェクトでコールセンター人材の採用及び教育、プロジェクトマネジメント業務等に従事してはいましたが、人事は未知への挑戦でした。
「人事=採用」だと誤解している方に出会うことがありますが、採用は人事の仕事のごく一部なだけ。
とても経験があるとは言えない経歴でした。
ローカルITベンチャー企業に入社後は、一貫して人事部門に配属され、人事業務を担当することになります。
入社半年後に責任者を拝命したり、人事と兼任で自社プロダクト(ECモール)のカスタマーサポート業務や上場申請対応、人材営業にも従事したりとアグレッシブな日々を送っていました。
主な業務内容
半年に1回の頻度で所属部門名や役職名が変わる組織でしたが、基本業務は変わらず次々と業務が追加されていく環境で働いていました。
ひとり人事期間が長かったですが、他部門の方が非常に強力的だったのが救いです。
採用
★新卒採用実績(年間平均7名) 中途採用実績(年間平均50名)
- 採用計画及び選考方法の企画・立案・実施・検証、面接対応、面接官指導
- 会社説明会の企画・立案・実施・検証(外部イベントを含む)
- 応募受付、選考日程調整、選考結果連絡対応
- 募集媒体及びエージェントの選定・手配、募集内容の企画・立案(平均20~30媒体使用)
- 採用ツールの企画、デザイナーと連携したデザインディレクション、発注対応
- スカウト対応、社員紹介制度の企画・立案、社員への紹介啓蒙活動
- 大学、高専、専門学校への訪問活動(自社PR)、学内説明会の実施
- 外国籍内定者の就業ビザ取得支援
教育
- 教育プログラムの企画・立案、全社導入
- 新入社員研修及び新卒社員研修の企画・立案・検証、研修資料の作成、研修実施(講師)
社員就業フォロー
- 労務相談窓口対応、メンタルヘルス相談窓口対応、キャリアコンサルティング窓口対応
- 社外就業社員を対象とした定期訪問面談対応
- 退職人事面談対応、休職及び復職人事面談対応、休職期間中のフォローアップ実施
- 各種面談後のフォローアップ実施
- 衛生委員会への出席、就業環境改善に関し衛生管理者としての改善提案
人事管理・労務管理
- 人事評価制度の企画・立案、全社導入
- 従業員情報データベースの作成・更新、従業員情報の分析・集計、労働者名簿の作成・更新
- 従業員の評価集計、給与及び賞与への反映、人事辞令及び辞令作成、組織図作成
- 就業規則・規程の改定(主に労務関連)
- 健康診断、ストレスチェックを含む産業医・労基署対応全般
- キャリアアップ助成金の申請書作成・手続き、訓練講師、キャリアカウンセリング実施
社内イベント
- 社員総会、入社式、内定式などの社内イベントの企画・幹事業務全般
人事としての心構え
挙げればキリがないくらい意識して自分を律していたことがありますが、今回は厳選して3つだけ取り上げます。
360度の視野を持つ
人事は板挟みになりやすいポジションです。
経営層の方針と社員の想い、会社の意向と応募者の熱意などあらゆる場面で複数の意見や状況の落としどころを見極める必要があります。
このような時は必ず片方の意見や状況だけ確認するのではなく、360度あらゆる角度から事実を確認することを心掛けていました。
感情的にならず冷静に。
自分の枠組みで判断しないこと。
事実と感情を分けて、慎重に整理しなければ真の落としどころは見極められません。
360度、全方向から検証する習慣は人事の仕事を離れてもコンサルティング業務で活かせてます。
想いを汲み取り言語化する
人事は板挟みになりやすいポジションですが、同時に「かけ橋」の役割を担えます。
経営層の方針を社員に伝わるように翻訳して伝える。
社員の想いを経営層が経営判断できるデータとして言語化して伝える。
会社の想いを会社を代表して応募者に伝える。
応募者の熱意を補足して社内にフィードバックする。
言語・非言語問わず、想いを汲み取り言語化し必要な人に届けることは人事として大切な役目だと考えてます。
どっしり構える
人事は人に関わる仕事なので、予定通りに業務が進むことの方が珍しいです。
面接予定の応募者が来ない、連絡も取れないと言ったことは珍しいことでもありません。
社員と連絡が取れず、安否確認で市内を走りまわることもあります。
予期せぬ不幸は誰にもコントロールできません。
そして突発的なことほど人事がハンドルする事案が多いので、いちいち焦っていては社内が混乱してしまいます。
内心はドキドキ冷や汗をかきながらも、社内を動揺させないために人事はどっしり構えることが大切です。
その上で判断できないことは一人で抱え込まず、他部署にエスカレーションしたり協力を仰ぎます。
何が起きても360度の視野で、事実を冷静に把握すること。
そうすれば大抵のことは解決に導けます。
人事を目指したい人へ
最後に人事を目指したい方に、どうしても伝えたいことがあります。
「人が好きなので人事になりたい」
この動機だけで人事になるのはオススメしません。
人が好きと言えなくなるくらい、人間の深い感情に触れることが多い仕事だからです。
また人事は組織人である以上、会社の方針に沿った判断をする必要があります。
その方針に納得できなくても組織人として冷徹な判断をし、厳しい話をしなければいけない場面もあるでしょう。
意に反した対応をしなければならず、社内から反発を受けることもあるでしょう。
「そんな企業で働かなければいい」と思うかもしれませんが、大なり小なりどの企業でも起こりうることです。
それでも私は人事の仕事が好きでした。
多様な意見をすり合わせて、ひとつの結論を導き出す。
正解が分からない中で、失敗を繰り返しながらも組織が成長していく過程にワクワクできたからかもしれません。
退職時に54名から160名ほどの組織になっていたことは、今振り返っても感慨深いものがあります。
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宮治 有希乃
組織育成パートナー
ITベンチャーと人材ビジネス業界で11年間、組織人事・キャリア領域に取り組み、2018年に独立。現在は中小企業向けに、関係の質を高める組織育成プログラムを提供中。「関係の質」を高める「コミュニケーションスタイル診断」を活用し、研修やコンサルティングを通じて組織パフォーマンスの向上と健全な職場環境づくりを支援している。